女性石工 日本初 蔑視 偏見乗り越えて
京都の瀧安寺の石庭にみられるように、
「日本人の遺伝子には石を見て癒される要素がある」と言う専門家がいます。
日頃私達が目にする石加工の製品は数多くあります。
墓石、石碑、灯籠、石塀、彫刻、はてはアクセサリ類まで生活空間に存在します。
それだけ私達日本人は石に囲まれていると思います。
森喜朗・元首相の女性蔑視発言は大きな問題となりましたが、
そんな馬鹿げた発言を吹っ飛ばす女性がいます。
日本初の女性石職人が誕生しました。
男だけの世界に飛び込んだ勇気には頭が下がるおもいです。
日本初の女性石職人として活躍する上野梓さん(39才)です。
良質な石の産地であり、
“石の都”として450年の歴史を誇る、愛知県岡崎市の職人の家に三姉妹の末っ子として、
上野さんは生まれた。
「跡継ぎを期待した父親が3人目も女の子だったことに落胆し、生まれたときも病院に
見にこなかったという話を母から聞いて、子供ながらに責任を感じていました(苦笑)。
それで無意識のうちに男にならなきゃと思い込み、自分を“ぼく”と呼んでいたんです」
(上野さん・以下同)
小学3年生のときの文集に「将来の夢はお父さんの跡継ぎになりたい」と書き、高校卒業と同時に
父に弟子入りしたが、道のりは険しかった。
「岡崎には石工が100軒以上あり、横のつながりがものすごく強いんです。組合の会議に青年会、
夜の飲み会などが目白押しで、最初は私が顔を出すと『小娘が入ってきたぞ』という雰囲気でした。
女性がまったくいない組織でどう接すればいいか戸惑っただろうし、“女性初”とメディアで取
り上げられる私に『必要以上にチヤホヤされている』という感情を持つ人もいたと思います」
仕事そのものも、一筋縄ではいかない。工場で石を削り、灯籠を作る修業をしながら現場では男性の
職人と一緒にセメントを練り、つるはしを振り下ろし、手押し車を押した。
毎日疲労困憊するまで働き、手はマメだらけ。「父と母の石屋を途絶えさせたくない」という一心で努力を続けた。
やがて努力は結果を生む。2003年には、21才以下の職人が参加する技能五輪全国大会・石工部門で銅メダルに輝き、
2010年には取得が難しい1級石工技能士資格に合格。
現在はオリジナルブランドを立ち上げるなど画期的な挑戦を続け、
墓や灯籠から手のひらサイズのかわいい動物まで手がける。
※女性セブン2021年3月18日号より
体力などさまざまなハンデがを乗り越えて、ここまで成長された上野さんは、人間としての荘厳さも感じます。
「私は石工を通じて、そんな魅力をもっと伝えたいのです」と彼女は言います。
ちなみに石を研磨し、製品として出来る限界点が10mmと言われていますが、
ある会社の特殊技術では現在1mmまで製品化可能ということです。
一見して荒ぽい仕事のように私達素人はそう思いがちですが、こんな繊細な作業をしていることに
驚きとともに、ある種尊敬の念を持つほどです。
さつき空 野立に打てる 石工おり